社会保険労務士(社労士) 過去問
第57回(令和7年度)
問4 ((択一式)労働基準法及び労働安全衛生法 問4)

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問題

社会保険労務士(社労士)試験 第57回(令和7年度) 問4((択一式)労働基準法及び労働安全衛生法 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することができる。
  • 労働基準法第24条第1項は、使用者の意思で労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となるものではない。
  • 労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの分の賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。
  • 労働者が労働基準法第25条に従い賃金の非常時払を請求する場合には、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金も含めて支払期日前に支払う義務を負う。
  • 使用者の責に帰すべき事由による休業期間中であっても、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う義務は生じない。

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この過去問の解説 (3件)

01

賃金の支払いについて問われる問題であり、その5つの原則やそれに関連して、前借金相殺の禁止や非常時払について押さえることで解答を導き出すことができます。

選択肢1. 使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することができる。

誤りです。

労働組合もしくは労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があることによって、使用者が労働者の前借金を相殺することができることにはなっていません。

選択肢2. 労働基準法第24条第1項は、使用者の意思で労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となるものではない。

誤りです。

労働基準法第24条第1項では「直接払の原則」があります。

労働者の親権者や法定代理人、弁護士などの任意代理人に賃金を支払うことも違反となり、委任や代理等の法律行為は無効なものとなります。

一方で、労働者本人が体調不良で外出できず、配偶者が受け取るなど、本人の意思を伝達するだけの「使者」としての立場であれば代理等の法律行為とはならないため、例外として認められる場合があります。

選択肢3. 労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの分の賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。

誤りです。

ストライキ中に支払わないとされている賃金が、その当月は過払いとなったため翌月精算されるのは当然といえます。

判例で、過払いのあった時期と賃金の精算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期に精算がなされ、その額が多額にわたらないうえ(本問では5日)、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないため、賃金全額払の原則に違反するものではありません。

選択肢4. 労働者が労働基準法第25条に従い賃金の非常時払を請求する場合には、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金も含めて支払期日前に支払う義務を負う。

誤りです。

労働基準法第25条の非常時払については、労働者と使用者の間で特約がないのであれば、支払期日前であっても既往の労働に対する賃金を使用者は支払わなければならないとされています。

使用者は労働の提供のない期間に対する賃金を支払う義務を負ってはいません。

選択肢5. 使用者の責に帰すべき事由による休業期間中であっても、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う義務は生じない。

正しいです。

休業手当は休業期間に対して支払われますが、労働協約、就業規則又は労働協約により休日(法令休日及び所定休日)と定められている日については、使用者は休業手当を支払う義務はありません。

まとめ

法律の条文のみならず、判例の知識も必要な問題です。

過去にも出題されていますので、やはり過去問を繰り返し解くことが重要です。

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02

賃金支払いの5原則は非常に重要なのでしっかり押さえておきましょう。
原則と例外について正確に覚えることが重要です。
 

選択肢1. 使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することができる。

誤りの肢です。
賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することはできません。(労働基準法17条)
本規定は借金等の為に労働が強制されることを防ぐ主旨の規定ですので、労使協定がある場合でも同様です。

選択肢2. 労働基準法第24条第1項は、使用者の意思で労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となるものではない。

誤りの肢です。
直接払いの原則に反します。
代理人等はもちろん、賃金債権の譲渡を受けた者に支払うことも認められません。(小倉電話局事件)

選択肢3. 労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの分の賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。

誤りの肢です。
賃金について「法令に別段の定めがある場合」「労使協定がある場合」以外の控除(相殺も含む)は原則禁止です。(全額払いの原則)
ただ、例外として給与の過払い等について調整的な控除が認められるケースもありますので、判例とあわせ確認しておきましょう。
「賃金過払による相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、その金額、方法等においても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、許されるものと解される。」(福岡県教組事件)

選択肢4. 労働者が労働基準法第25条に従い賃金の非常時払を請求する場合には、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金も含めて支払期日前に支払う義務を負う。

誤りの肢です。
非常時払いについては「既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」と規定されています。(労働基準法25条)
「既往」とは過ぎ去ったことという意味ですから、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金を支払う必要はありません。

選択肢5. 使用者の責に帰すべき事由による休業期間中であっても、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う義務は生じない。

記載の通りです。
休業手当は使用者の責に帰すべき事由による休業について支払うものです。
労働の提供ができるのにさせてもらえない労働者の生活保障として捉えるとわかりやすいです。
休日には労働するしない以前に労働義務がありませんので、休業手当を支給する必要はありません。
なお、似たようなものに休業補償がありますが、こちらは休日とされている日にも支払う必要があります。
違いを整理しておきましょう。
また、併せて使用者の責に帰すべき事由にどんなものが該当するのか確認しておくとより安心です。

まとめ

賃金については頻出論点ですので確実に得点できるようにしたいところです。

5原則については過去問等で問われた論点を押さえておけば安心です。

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03

労働基準法11条は、賃金について「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義しています。

 

その上で労働基準法は、労働者の賃金請求権を確保し賃金支払いを守るため、重要な原則を定めています。

本問は当該原則に関する問題ですので、それぞれの選択肢を通じて確認していきましょう。

選択肢1. 使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することができる。

誤った選択肢です。

 

賃金に関するルール①として、「全額払いの原則」があります。

法24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めており、賃金は原則その全額が支払わなければなりません。

 

このことから、「使用者による一方的な相殺」は禁止されます。

例えば、使用者が労働者にお金を貸していて、貸金債権返還請求権を有する場合であっても、使用者は、当該債権と、労働者が使用者に対して有する賃金支払請求権とを相殺することは禁止されています。

 

労働者にとって賃金は、その生活に不可欠なきわめて重要なものであるため、このような厳格な制限が設けられています。

 

そして、この原則は、労働者の過半数で組織する労働組合や労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合でも緩和されません。

すなわち、このような協定があっても、使用者による一方的な相殺は禁止されるのであり、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することはできません(本肢のような緩和規定はありません)。

 

なお、全額払い・使用者からの相殺禁止の原則には、以下2つの例外が判例により認められています。

①労働者の自由意思に基づく同意

労働者が、使用者に対して負う債務と賃金請求権とを相殺することについて、その自由な意思に基づいて同意し、かつ合理的な理由がある場合には、例外的に相殺が許容されます。

ただし、上記した趣旨から、「自由な意思」であるか(強制されていないか)は厳格に判断されます。

 

調整的相殺

賃金計算などに誤りがあり、労働者に過払いがあった場合には、その時期と合理的に接着しており、労働者にあらかじめ予告していて、控除(相殺)される額が多額でなく労働者の経済生活の安定を著しく害するおそれがない場合には、例外的に相殺(多く払ってしまった分を翌月の給料から控除すること)が認められます。

選択肢2. 労働基準法第24条第1項は、使用者の意思で労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となるものではない。

誤った選択肢です。

 

賃金に関するルールその②として、「直接払いの原則」があります。

これは、「賃金は、直接労働者に支払わなければいけない」というものです。

このことから、

・労働者の代理人に給与を支払ってはいけません

・労働者が賃金債権を第三者に譲渡した場合でも、当該債権の譲受人に対して賃金を支払うことは禁止されます(差押の場合を除く)

 

これは、第三者が労働者を働かせ、そこから金銭を得るという不当な搾取を防止する趣旨です。

 

そのため、選択肢にあるように「労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為」は本条の趣旨に反するものであり、無効となります。

選択肢3. 労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの分の賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。

誤った選択肢です。

 

他の選択肢でみたように、賃金に関するルール①として、「全額払いの原則」があります。

法24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めており、賃金は原則その全額が支払わなければなりません。

 

他方で、「ノーワーク・ノーペイの原則」といわれる、実際に労働が行われなかった日については賃金を支払う必要がない、という原則があります。

本問の労働者は、8月中の所定労働日に5日間ストライキを行っていることから、賃金は支払われません。

しかし、この賃金相当分は8月中の賃金として支払われてしまっているので、労働者は、本来得るべきでないお金を有している状態であり、他方で使用者は、労働者に対し過払いが生じてしまっている状態です。

 

そこで、これを控除して支払うことが許されるか、使用者による一方的な相殺として許されないのではないか、というのが問題点です。

これについては、他の選択肢で見た通り、原則として「使用者による一方的な相殺」は許されません。

他方で、賃金計算などに誤りがあり、労働者に過払いがあった場合には、その時期と合理的に接着しており、労働者にあらかじめ予告していて、控除(相殺)される額が多額でなく労働者の経済生活の安定を著しく害するおそれがない場合には、例外的に調整的相殺をすることが認められていました。

 

本問においては、過払いがあり、その時期は調整しようとしている賃金の前月分であることから、労働者に予告がされており、金額が多額ではなく、労働者の経済生活を著しく害する恐れがない場合には、調整的相殺も認められます。

そして、実際に判例(昭和23年7月3日)は、本肢と同様の事案において、調整的相殺をすることを認めています。

このことから本問において調整的相殺が認められるので、選択肢は「賃金全額払原則に違反する」としている点で誤りです。

選択肢4. 労働者が労働基準法第25条に従い賃金の非常時払を請求する場合には、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金も含めて支払期日前に支払う義務を負う。

誤った選択肢です。

 

賃金に関するルール③として、「非常時払いの原則」があります。

法25条は、「使用者は、労働者が出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」と定めています。

 

ここでいう「非常の場合」とは、労働者又はその収入によって生計を維持する者が、次のいずれかに該当した場合を言います。

・出産し、疾病にかかり、又は災害を受けた場合

・結婚し、又は死亡した場合

・やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合

 

もっとも、法25条が定めているのは「既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」ということなので、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金を前払する義務まではありません。

よって、当該義務を負うとしている選択肢は誤りです。

選択肢5. 使用者の責に帰すべき事由による休業期間中であっても、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う義務は生じない。

正しい選択肢です。

賃金に関するルール④として、休業手当があります。

法26条は「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。

これは、使用者に対し、労働者の生活保障を義務づけた趣旨です。

 

この休業手当を支払う必要があるのは、法26条が定めるとおり「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合です。

したがって、この事由による休業「期間」中であっても、もともと労働協約等により休日と定められている日は法的休日であって、当該日については「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には当たりません。

よって、使用者には休業手当を支払う義務は生じません。

まとめ

賃金に関するルールはいずれも重要なので、必ず押さえておかなければなりません。

もっともその内容は、合理的な措置(調整的相殺など)を認めながらも労働者を保護するものになっていますので、特に会社やアルバイトで働いている皆さんは、自分の給料が××の場合はどうだろう、どの原則が適用されるのだろう、と自分に置き換えて考えてみると定着しやすいです。

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