社会保険労務士(社労士) 過去問
第57回(令和7年度)
問6 ((択一式)労働基準法及び労働安全衛生法 問6)

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問題

社会保険労務士(社労士)試験 第57回(令和7年度) 問6((択一式)労働基準法及び労働安全衛生法 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法第37条(以下本問において「本条」という。)に定める割増賃金の基礎となる賃金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 通勤手当を、月額1,000円までは距離にかかわらず一律に、1,000円を超える場合は実際距離に応じた額を支給することとしている場合、割増賃金の基礎となる賃金の算定に当たっては、一律に支給される1,000円を含む通勤手当として支給した額全額を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。
  • 手術に従事した医師に対して支払われる手術手当は、当該手術手当を支給される医師が手術以外の業務で法定時間外労働を行った場合においても、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとされている。
  • 通常は事務作業に従事している労働者が、法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる現場作業に従事した場合、当該労働者にとって当該現場作業は本条第1項の「通常の労働時間」には該当しないので、当該特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。
  • いわゆる年俸制の適用を受ける労働者の割増賃金の取扱いについて、賞与の支給額が確定しており、かつ、毎月支払部分と賞与とが明確に区分されている場合には、当該賞与額を割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。
  • 正規の勤務時間による勤務の一部又は全部が午後10時から午前5時までの間において行われる看護業務に従事したときに、その勤務1回につき夜間看護手当として3,000円を支払う場合、当該夜間看護手当は、本条第1項の通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められないから、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

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この過去問の解説 (3件)

01

時間外労働や深夜労働など割増賃金の算定基礎から除外される賃金は主に以下のものが挙げられます。

 

①家族手当

②通勤手当

③別居手当

④子女教育手当

⑤住宅手当

⑥臨時に支払われた賃金

⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

これらは限定列挙であり、賃金の名称等については実質によって判断します。

選択肢1. 通勤手当を、月額1,000円までは距離にかかわらず一律に、1,000円を超える場合は実際距離に応じた額を支給することとしている場合、割増賃金の基礎となる賃金の算定に当たっては、一律に支給される1,000円を含む通勤手当として支給した額全額を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤りです。

割増賃金の算定基礎から除外される賃金として「通勤手当」はありますが、労働者の実際の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定されるものとなります。

本肢の場合、距離に関わらず1,000円が一律に支給されるものは割増賃金の基礎に含めなければならないため、誤りとなります。

選択肢2. 手術に従事した医師に対して支払われる手術手当は、当該手術手当を支給される医師が手術以外の業務で法定時間外労働を行った場合においても、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとされている。

誤りです。

手術以外の業務による時間外労働であり、手術手当は本来その時間の「通常賃金」ではないため、割増賃金の基礎に算入しなければならないものではありません。

選択肢3. 通常は事務作業に従事している労働者が、法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる現場作業に従事した場合、当該労働者にとって当該現場作業は本条第1項の「通常の労働時間」には該当しないので、当該特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤りです。

本肢のように特殊作業手当が支払われる場合にあって、その現場作業が法定労働時間に及ぶときは、当該特殊作業手当は割増賃金の基礎に含めなければならないものとなります。

選択肢4. いわゆる年俸制の適用を受ける労働者の割増賃金の取扱いについて、賞与の支給額が確定しており、かつ、毎月支払部分と賞与とが明確に区分されている場合には、当該賞与額を割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。

誤りです。

毎月支払部分と賞与が明確に区分されているとしても、「臨時に支払われた賃金」及び「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」のどちらにも該当しないため、当該賞与額を割増賃金の基礎から除外することはできません。

選択肢5. 正規の勤務時間による勤務の一部又は全部が午後10時から午前5時までの間において行われる看護業務に従事したときに、その勤務1回につき夜間看護手当として3,000円を支払う場合、当該夜間看護手当は、本条第1項の通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められないから、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

正しいです。

本肢のように深夜時間帯に看護等の業務に従事したときに支給される夜間看護手当は、通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められないため、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくても差し支えないとされています。

まとめ

選択肢の中には行政通達から出題されているものもあり、難易度の高い問題です。

割増賃金の算定から除外される賃金については、名称等だけに囚われるのではなく、実質によって判断することが重要です。

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02

賃金等は勉強を進めていくといろいろなパターンが出てくるので混同しやすいです。
混同しやすいということは問題が作りやすいということでもあるので正確な記憶を心がけましょう。

選択肢1. 通勤手当を、月額1,000円までは距離にかかわらず一律に、1,000円を超える場合は実際距離に応じた額を支給することとしている場合、割増賃金の基礎となる賃金の算定に当たっては、一律に支給される1,000円を含む通勤手当として支給した額全額を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤りの肢です。
通勤手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差支えはありませんが、一定額が最低額として距離に関わらず支給される場合の当該一定額は算入しなければなりません。

選択肢2. 手術に従事した医師に対して支払われる手術手当は、当該手術手当を支給される医師が手術以外の業務で法定時間外労働を行った場合においても、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとされている。

誤りの肢です。
手術手当については、手当の対象となる業務が法定時間外に行われた場合に割増賃金の対象となります。
よって手術以外の業務によって法定時間外労働をしても割増賃金の基礎とする必要はありません。
本肢は通達の理解も必要で判断が難しいですが、結論だけ抑えておけば問題ないと思われます。
感覚的に、時間外労働と関係ない手術手当を含める必要はないと考えるのもよいと思います。
(昭26.8.6基収第3305号)

選択肢3. 通常は事務作業に従事している労働者が、法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる現場作業に従事した場合、当該労働者にとって当該現場作業は本条第1項の「通常の労働時間」には該当しないので、当該特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤りの肢です。
「手術に従事した医師に対して〜算入しなければならないとされている」の選択肢と殆ど同じ考え方でよろしいと思われます。
通常の作業が何かではなく、支払われている手当について
・労働の対償かどうか
・どの労働の対償かどうか(割増賃金の対象となる労働の対償かどうか)
で判断すると良いと思われます。
(昭23.11.22基発1681号)

選択肢4. いわゆる年俸制の適用を受ける労働者の割増賃金の取扱いについて、賞与の支給額が確定しており、かつ、毎月支払部分と賞与とが明確に区分されている場合には、当該賞与額を割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。

誤りの肢です。
当該賞与は割増賃金の基礎となる賃金の参入しなくてもよい賃金のいずれにも該当しません。
そもそも支給額が確定しているものは労働基準法上の賞与ではありません。
(昭22.9.13発基17号)
該当条文(労働基準法第37条、施行規則第21条)を確認しておきましょう。
 

選択肢5. 正規の勤務時間による勤務の一部又は全部が午後10時から午前5時までの間において行われる看護業務に従事したときに、その勤務1回につき夜間看護手当として3,000円を支払う場合、当該夜間看護手当は、本条第1項の通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められないから、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

記載の通りです。
当該手当については労働時間の一部又は全部が深夜に含まれる際に支給されるものであり、通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められません。
その為、割増賃金の対象にはならないとされています。
これも結論だけ理解しておきましょう。

まとめ

本問は通達から出題の難問です。
とはいえ、賃金・報酬等についてはある程度問題もパターン化されている気もします。
(算定方法、時間外労働が翌日に及んだ場合、計算の基礎とする賃金の範囲など)

本問で問われている割増賃金については
労働基準法第37条
施行規則第19条第1項
施行規則第21条
については確実に理解しておけば、ある程度絞り込みが可能な問題が多いかと思います。

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03

労働基準法37条は、使用者が、臨時の必要又は三六協定により法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で、2割5分(休日の労働については3割5分)以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと定めています。

 

法が割増賃金の制度を設けている趣旨は以下の2つです。

・1つ目は、労働時間の原則を維持することです。

⇒使用者に割増賃金を課すことにより、時間外・休日労働を抑制するという目的があります。

 

・2つ目は、過重労働に対する労働者への補償です。

⇒休日労働や深夜労働は負担が大きいため、その分の賃金を割り増しすることで、労働者の労働対価を補償するという目的があります。

選択肢1. 通勤手当を、月額1,000円までは距離にかかわらず一律に、1,000円を超える場合は実際距離に応じた額を支給することとしている場合、割増賃金の基礎となる賃金の算定に当たっては、一律に支給される1,000円を含む通勤手当として支給した額全額を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤った選択肢です。

 

割増賃金の算定は、原則として以下の方法により算定されます。

給与形態算出方法
日給制の場合日給/1日の所定労働時間数
月額制の場合月給/当該月における所定労働時間数
出来高払制(請負など)賃金算定期間の賃金総額/その算定期間における総労働時間数で除した場合

 

もっとも、通勤手当は、労働者の便宜のために労働者が実際に通勤に要した費用を補填するものですので、賃金には当たらず、割増賃金の算定にかかる賃金に算入する必要はありません。

ただし、【実際距離によらない固定額の通勤手当(=距離にかかわらず一律に支給されるもの)】については、上記の性質を有しませんので、「賃金に算入する必要がある」とされます。

 

したがって、選択肢は「月額1,000円までは距離にかかわらず一律に、1,000円を超える場合は実際距離に応じた額を支給することとしている場合」であるにもかかわらず、「一律に支給される1,000円を含む通勤手当として支給した額全額を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない」としている点で誤りです。

 

なお、賃金に算入しなくていいものは、通勤手当のほかに以下のようなものがあります。併せて押さえておきましょう。

①家族手当(ただし、家族の人数に関係なく一律に支給されるものは算入する必要がある)

②別居手当

③子女教育手当

④住宅手当(ただし、住宅に要する費用にかかわらず一律に低額で支給されるものは除く)

⑤臨時に支払われた賃金

⑥1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

選択肢2. 手術に従事した医師に対して支払われる手術手当は、当該手術手当を支給される医師が手術以外の業務で法定時間外労働を行った場合においても、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとされている。

誤った選択肢です。

 

行政通達からの出題ですが、考え方は簡単です。

行政通達は、【手術手当は、手術手当が与えられる勤務時間が法定の割増賃金を支払うべき時間に該当する場合にのみ、割増賃金となる賃金に算入しなければならない】【したがって、手術以外の業務で時間外労働を行った場合は、手術手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくてもよい】と通知しています。

 

要は、手術手当は、法定の割増賃金を支払うべき時間に手術をしたことに対する補償として支払われるよ、よって、手術以外の業務で時間外労働を行った場合には、手術手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入する必要はないよ、ということです。

 

よって、「割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとされている。」としている点で本肢は誤りです。

選択肢3. 通常は事務作業に従事している労働者が、法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる現場作業に従事した場合、当該労働者にとって当該現場作業は本条第1項の「通常の労働時間」には該当しないので、当該特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

誤った選択肢です。

 

本肢も行政通達からの出題です。

法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる」という定めになっている場合において、実際に法定労働時間外に特殊作業手当が支払われる現場に従事した場合には、当該労働者が普段は事務作業に従事していてこのような特殊作業に従事するものでなかったとしても、定めにしたがって、特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

 

よって、「当該特殊作業手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。」としている点で本肢は誤りです。

選択肢4. いわゆる年俸制の適用を受ける労働者の割増賃金の取扱いについて、賞与の支給額が確定しており、かつ、毎月支払部分と賞与とが明確に区分されている場合には、当該賞与額を割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。

誤った選択肢です。

 

他の肢で解説したとおり、例外的に賃金に算入しなくていいものとして、【臨時に支払われた賃金】がありました。

この点について、会社の業績や個人の査定によって支給額が変動する賞与については、あらかじめ額が決まっていませんので、【臨時に支払われた賃金】に該当し、例外的に賃金に算入する必要はありません。

 

他方で、本問のように「賞与の支給額が確定している場合」には、あらかじめ額が決められており、【臨時に支払われた賃金】には該当しません。

このことから、例外には当たらず、原則通り賃金に算入する必要があります。

 

よって、「当該賞与額を割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えない。」としている点で選択肢は誤りです。

選択肢5. 正規の勤務時間による勤務の一部又は全部が午後10時から午前5時までの間において行われる看護業務に従事したときに、その勤務1回につき夜間看護手当として3,000円を支払う場合、当該夜間看護手当は、本条第1項の通常の労働時間又は労働日の賃金とは認められないから、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないとされている。

正しい選択肢です。

 

本問も通達から出題されている問題です。

本問のように、夜間の看護業務に従事したことを条件に支払われる手当は、通常の労働時間又は労働日の賃金とは性質を異にします。

したがって、賃金の算定には参入されません。

まとめ

行政通達からの出題で細かいものもありましたが、賃金は原則としてどのような計算がされるのか、例外として賃金に算入されないものは何なのか、をまずはしっかりおさえましょう。

その上で、通達にあるような具体的な事例が、原則の場面なのか例外に近い場面なのかを考えることで、初見の問題でも対応できるようになります。

おそれず焦らず勉強していきましょう。

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