社会保険労務士(社労士) 過去問
第57回(令和7年度)
問27 ((択一式)雇用保険法 問7)

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問題

社会保険労務士(社労士)試験 第57回(令和7年度) 問27((択一式)雇用保険法 問7) (訂正依頼・報告はこちら)

解雇の効力について争いがある場合の基本手当に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 離職を認めず解雇の効力について争っているものの基本手当を受給している受給資格者が、事業所との間で雇用関係は継続するがその間賃金は支払わない旨の裁判上の和解が成立したときは、当該賃金を支払わないとされた間に支給を受けた基本手当を返還しないことができる。
  • 基本手当を受給している者に対し賃金支払いの仮処分命令により解雇時に遡及して賃金が支払われた場合、当該者は支給を受けた基本手当を返還しなければならない。
  • 解雇の効力について係争中に事業所が廃止となり、解雇無効の判決が確定しても原状回復の実現が不可能と認められる場合には、判決に先立って行われた資格喪失の確認処分は取り消されない。
  • X社を解雇された基本手当の受給資格者が、X社における解雇の効力について係争中に適用事業所であるY社に就職し一般被保険者の資格を取得した。その後、X社に係る解雇無効の判決が確定し、Y社就職中の収入を控除してX社の賃金が支払われた。この場合、Y社就職中の収入の額がX社から支払われた賃金の額以上である期間については、当該者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係について被保険者資格を取得する。
  • 労働者が事業主の行った解雇について労働組合法第7条に違反するから無効であると主張し、当該労働者が加入する労働組合が労働委員会に対して不当労働行為の申立てをしその効力を争っている場合においては、救済命令が確定するまでは、他の要件を満たす限り当該労働者は基本手当の支給を受けることができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

解雇の効力を争っている場合の基本手当の受給についての問題です。
仮に無効な解雇だったとしても労働者が勤務を継続することは現実的ではありません。
基本手当は生活保障という意味合いが大きいですので、「労働者の保護」としての見地から考えてみるとわかりやすいかもしれません。

選択肢1. 離職を認めず解雇の効力について争っているものの基本手当を受給している受給資格者が、事業所との間で雇用関係は継続するがその間賃金は支払わない旨の裁判上の和解が成立したときは、当該賃金を支払わないとされた間に支給を受けた基本手当を返還しないことができる。

誤りの肢です。
こちらが正解肢となります。

本肢のケースでは基本手当の返還をする必要があります。
ややわかりにくい文面なのでまず整理しましょう。


本肢はざっくりいうと、
1.解雇が有効無効かわからない間にとりあえず離職したものとして基本手当を受給していた。
2.和解をし、解雇は取り消すことになったが、その間の給与は支払わないことになったのでもらった分の基本手当を返還しなくてもよいか。
というお話です。


和解とは争いの当事者が相互にその主張を譲歩して争いを解決する契約であり、その内容は当事者間で自由に定めらることから、受給要件の緩和は認められません。
(雇用保険に関する業務取扱要領53302(2)ル)


このケースではそもそも離職自体がなかった話となり、さらに受給要件の緩和もないということで何か特別な取扱いを受けるわけでもなく、結果として受給要件を満たしていません。
本来もらえないものをもらっていたことになる訳ですから、当たり前に返還する義務を負うことになります。

選択肢2. 基本手当を受給している者に対し賃金支払いの仮処分命令により解雇時に遡及して賃金が支払われた場合、当該者は支給を受けた基本手当を返還しなければならない。

記載の通りです。
大前提として基本手当の趣旨としては離職者の生活保障であります。
仮処分命令が出され、当該命令により賃金が支払われた場合には、賃金が支払われた期間については、暫定的であっても労働者の生活保障が従前の事業主によりなされ、失業状態は解消したものと考えられます。
よって雇用関係が存在する場合と同等に扱われ、「離職を認めず〜しないことができる。」の選択肢と同様、受給要件を満たさないことになります。
したがって、基本手当は返還する必要があります。
(雇用保険に関する業務取扱要領53302(2)ホ)


尚、後になって解雇有効等になり、仮処分命令によって支払われた賃金が返還された場合は再度支給されることになります。
面倒な処理だと思われるかもしれませんが、単に二重取りはできないということです。
余談ですが、仮処分命令とは債権者の権利を保全するために行う暫定的な民事保全手続きです。

選択肢3. 解雇の効力について係争中に事業所が廃止となり、解雇無効の判決が確定しても原状回復の実現が不可能と認められる場合には、判決に先立って行われた資格喪失の確認処分は取り消されない。

記載の通りです。
本来解雇について争った結果、解雇が無効又は不当とされ取り消された場合は離職自体が一旦なかったことになります。(=雇用保険の資格喪失がなかったことになります。)
一方、本肢のごとく解雇の効力等について係争中に、事業所を廃止するか又は事実上廃止と同様の状態
に至ったため、たとえ解雇無効(原状回復を含む。)の命令、判決又は判定が確定し
ても、原状回復の実現が不可能と認められる場合には、この状態が継続する限り、資格喪失の確認処分を取り消す必要はないとされています。
(雇用保険に関する業務取扱要領53253)

選択肢4. X社を解雇された基本手当の受給資格者が、X社における解雇の効力について係争中に適用事業所であるY社に就職し一般被保険者の資格を取得した。その後、X社に係る解雇無効の判決が確定し、Y社就職中の収入を控除してX社の賃金が支払われた。この場合、Y社就職中の収入の額がX社から支払われた賃金の額以上である期間については、当該者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係について被保険者資格を取得する。

記載の通りです。
解雇され、その当不当を争っていたとしてもその間生活をする必要がありますから、一旦一般被保険者となるような形で再就職するケースも考えられます。
そのうえで解雇無効となった場合、雇用保険上の雇用関係が重複することになります。
そして本肢のように就職中の収入を控除して賃金が支払われたことにより、就職中の収入の額が当該賃金の額以上である期間については、労働者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係についての被保険者資格を認めることとされています。
(雇用保険に関する業務取扱要領53255)

選択肢5. 労働者が事業主の行った解雇について労働組合法第7条に違反するから無効であると主張し、当該労働者が加入する労働組合が労働委員会に対して不当労働行為の申立てをしその効力を争っている場合においては、救済命令が確定するまでは、他の要件を満たす限り当該労働者は基本手当の支給を受けることができる。

記載の通りです。
労働組合法第7条は「不当労働行為」について定めています。
そして不当労働行為には救済の制度があり、労働委員会へ申立てを行う事で、労働委員会が不当労働行為の事実があると認めた場合、復職、賃金差額支払い、組合運営への介入の禁止等といった救済命令を出します。
本肢においては解雇が無効になるという理解でよろしいですが、解雇事実の判定はきわめて困難であり、一方、労働者を保護する必要が大であるので、解雇の効力等について争いがある場合における措置として、一定の場合に限って資格喪失の確認を行い、これに基づき基本手当等を支給することとするものとされています。
(雇用保険に関する業務取扱要領53201-53250 1概要)

まとめ

本問はやや難問です。
細かい論点かつ文章も長く、書き方もややこしいです。
社労士試験の択一式は長文の肢が多く、読んでいるだけで疲れてきます。
平易な言葉に置き換えてイメージをざっくりつかむ訓練をしておくと良いかもしれません。

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02

本問は、解雇された労働者が「その解雇は無効だ」と争っている間に、基本手当を受けられるか、また後に解雇無効・賃金支払・和解等があった場合に、既に受けた基本手当を返還する必要があるかを問う問題です。

解雇の効力が争われている段階では、解雇事実の判定が困難であり、労働者保護の必要も大きいため、一定の場合には資格喪失を確認し、これに基づいて基本手当を支給する取扱いが認められています。

もっとも、この支給はあくまで暫定的なものであり、後に解雇無効の判決、救済命令、賃金の遡及支払、和解などにより「雇用関係が続いていた」と評価される場合には、支給済みの基本手当を返還する場面が生じます。

選択肢1. 離職を認めず解雇の効力について争っているものの基本手当を受給している受給資格者が、事業所との間で雇用関係は継続するがその間賃金は支払わない旨の裁判上の和解が成立したときは、当該賃金を支払わないとされた間に支給を受けた基本手当を返還しないことができる。

誤りです。
「雇用関係は継続するが、その間賃金は支払わない」という和解が成立しても、それだけで基本手当を返還しなくてよい扱いにはなりません。

このような和解が成立しても受給要件の緩和は認められないとされています。
理由は、和解で「雇用関係は継続していた」とする以上、その期間は雇用保険上の離職して失業している状態とはいえなくなるからです。基本手当は、賃金が支払われないこと自体を補填する制度ではなく、あくまで「離職して、労働の意思・能力があるのに職業に就けない状態」に対する給付です。

 

本肢では、裁判上の和解により、当事者間では「雇用関係は継続していた」と整理されています。

そうすると、形式的には、解雇によって離職したという前提が崩れます。

にもかかわらず、「その間は賃金を支払わないことにしたのだから、基本手当だけは返さなくてよい」としてしまうと、当事者間の和解内容によって、雇用保険の受給要件を事実上変更できることになってしまいます。


<民事上の和解>
会社と労働者が、「雇用関係は続いていたことにする」「ただし賃金は支払わない」と合意することはあり得る。

 

<雇用保険上の判断>
その合意によって、基本手当の受給要件、つまり「離職」「失業」の要件まで緩めることはできない。

 

特に重要なのは、「賃金がない=失業」ではないという点です。

雇用関係が継続しているのに賃金が支払われない状態は、労働法上・民事上は未払賃金や和解条件の問題になりますが、雇用保険上は当然に基本手当の支給対象になるわけではありません。

当事者からすると、「会社から賃金ももらえず、ハローワークの基本手当も返せというのは酷ではないか」と感じると思います。

しかし、制度上は、基本手当をそのまま認めると、会社と労働者が和解で「雇用関係は継続、賃金はなし」と定めるだけで、雇用保険から生活費を出させることになってしまいます。

これは、雇用保険が本来想定している「失業者への給付」の範囲を超えるため、認められないという整理です。

選択肢2. 基本手当を受給している者に対し賃金支払いの仮処分命令により解雇時に遡及して賃金が支払われた場合、当該者は支給を受けた基本手当を返還しなければならない。

正しいです。

賃金支払の仮処分命令により、解雇時に遡って賃金が支払われた場合は、その期間は失業状態が解消したものとして扱われます。

そのため、既に支給された基本手当は返還対象となります。

選択肢3. 解雇の効力について係争中に事業所が廃止となり、解雇無効の判決が確定しても原状回復の実現が不可能と認められる場合には、判決に先立って行われた資格喪失の確認処分は取り消されない。

正しいです。
解雇係争中に事業所が廃止され、仮に解雇無効の判決が確定しても原状回復が不可能な場合は、資格喪失の確認処分を取り消す必要はありません。

つまり、雇用関係を元に戻せない以上、過去の資格喪失処分を取り消さない扱いとなります。

選択肢4. X社を解雇された基本手当の受給資格者が、X社における解雇の効力について係争中に適用事業所であるY社に就職し一般被保険者の資格を取得した。その後、X社に係る解雇無効の判決が確定し、Y社就職中の収入を控除してX社の賃金が支払われた。この場合、Y社就職中の収入の額がX社から支払われた賃金の額以上である期間については、当該者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係について被保険者資格を取得する。

正しいです。
X社の解雇係争中にY社へ就職して被保険者資格を取得した場合でも、その後X社の解雇無効が確定し、Y社収入を控除してX社賃金が支払われたときは、Y社収入がX社賃金以上の期間について、本人の希望により、いずれか一方の雇用関係で被保険者資格を認める扱いとなります。

選択肢5. 労働者が事業主の行った解雇について労働組合法第7条に違反するから無効であると主張し、当該労働者が加入する労働組合が労働委員会に対して不当労働行為の申立てをしその効力を争っている場合においては、救済命令が確定するまでは、他の要件を満たす限り当該労働者は基本手当の支給を受けることができる。

正しいです。
労働組合法第7条違反、つまり不当労働行為として解雇の効力を争っている場合も、救済命令等が確定するまでは、要件を満たす限り基本手当の支給を受けることができます。

ただし、これは暫定的な支給であり、後に解雇無効・賃金遡及支払等が確定すれば返還しなければならないこともあります。

まとめ

雇用保険法では珍しい判例に関する問題で難易度は高いと考えます。

「係争中は生活保護的に基本手当を出す。ただし、あとで賃金・雇用関係が戻れば調整・返還」という覚え方をすると良いです。

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