社会保険労務士(社労士) 過去問
第57回(令和7年度)
問30 ((択一式)雇用保険法 問10)
問題文
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問題
社会保険労務士(社労士)試験 第57回(令和7年度) 問30((択一式)雇用保険法 問10) (訂正依頼・報告はこちら)
- 概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分について不服がある者は、所轄都道府県労働局の労働保険審査官に対して審査請求をすることができる。
- 概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分に不服がある場合、当該処分があったことを知った日から3か月以内かつ処分の日から1年以内でなければ、取消訴訟を提起することができない。
- 概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分に不服がある場合、審査請求の裁決を経た後でなければ、当該処分の取消しの訴えを提起することができない。
- 当該保険年度の概算保険料を期限内に申告納付したが、誤って当該概算保険料を同一期限内に再度納付したため誤納金が生じた場合、再度納付した日の翌日から起算して2年を経過したとき、当該誤納金の還付を受ける権利は時効によって消滅する。
- 概算保険料の確定精算に基づき納付すべき不足額が時効で消滅している場合、納付義務者がその時効による利益を放棄して納付する意思を示したときは、政府はその徴収権を行使できる。
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この過去問の解説 (3件)
01
徴収法からの出題です。
審査請求の不服の申立てについての問題ですが、徴収法の規定による処分については「労働保険審査官及び労働保険審査会法(以下、労働保険審査法)」ではなく、「行政不服審査法」の適用対象になることをまず理解してから臨みましょう。
誤りの肢です。
厚生労働大臣に審査請求することとなります。(行政不服審査法第4条)
労働保険審査官は労働保険審査法に規定されており、労災法第38条第1項に規定される審査請求の審査請求先です。
誤りの肢です。
行政事件訴訟法からの出題です。
正しくは処分又は裁決があったことを知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内です。
念のため申し添えると翌日起算です。(民法140条 初日不算入の原則)
行政不服審査法も同様ですが、主観的起算点(権利を行使できると知ったとき)と客観的起算点(権利を行使できるとき)の両方の時効が定められています。
尚、行政不服審査法の場合は処分あったことを知った日の翌日から3か月以内です。
誤りの肢です。
どちらが先でも構いませんし、何なら並行することも可能です。
(並行した場合は訴訟手続きが中止される場合がありますが、そこまで聞かれないと思います。)
(行政事件訴訟法第8条)
尚、労働保険審査法においては審査請求をしなければ訴訟を提起することができません。(再審査請求までは不要/審査請求前置)
(労災保険法第40条、雇用保険法第71条)
記載の通りです。
労働保険料の還付を受ける権利は2年で時効によって消滅します。
(徴収法第41条)
尚、起算点についても誤納したために還付を受けられるわけですから、その翌日からで正しいです。(民法140条 初日不算入の原則)
誤りの肢です。
行使できません。
労働保険料の時効については援用(時効だと主張すること)が必要ないとされているため、時効の放棄をする以前に政府の徴収権が消滅してしまっているためです。
尚、時効の完成前に時効の利益は放棄できません。
本肢については結論だけ覚えてしまって構わないと思います。
本問は「当該保険年度の概算保険料を〜時効によって消滅する。」の選択肢が明らかに正しいので難しくはありませんが、行政書士の試験範囲のような肢が多く、受験資格が行政書士資格の人以外は面食らうかもしれません。
行政不服審査法は審査請求の一般法です。
労働保険審査法は審査請求の特別法という立場になります。
一般法は幅広く対象とするのに対し、特別法は限定的な事柄に適用される法律で、特別法の適用となる場合は一般法の適用が排除されます。(特別法優先の原則)
その為、労災保険や雇用保険に関する処分と徴収法では適用される法律が違うことになります。
行政不服審査法は行政書士の試験範囲ですのであまり深入りせず、
・徴収法は行政不服審査法の対象となること
・過去問で出てきたような基本的なこと
を覚えていくようにしましょう。
(行政事件訴訟法も同様です。)
労働保険審査法はしっかりカバーしておきたいところです。
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02
不服申立てや取消訴訟、時効に関する問題です。
誤りです。
労働保険徴収法の規定による行政処分については、特別法は規定されていないため、不服がある場合には、「行政不服審査法」に基づき請求を行うことになり、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができます。
労働保険審査官に対して不服申し立て(審査請求)をすることはありません。
誤りです。
審査請求をする場合は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、かつ処分の日の翌日から1年以内とされています。(行政不服審査法法18条の期間)
一方、取消訴訟を提起する場合は、原則として、処分又は裁決があったことを知った日から6か月以内、かつ処分又は裁決の日から1年以内とされています。(行政事件訴訟法14条の期間)
したがって、本肢は、「審査請求の期間である3か月」を、取消訴訟の出訴期間として書いている点が誤りです。
概算保険料額の認定決定の処分に不服がある場合、取消訴訟は、原則として、当該処分があったことを知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内に提起しなければならないとされています。
誤りです。
不服がある場合、行政不服審査法による審査請求をせずに、行政事件訴訟法に基づき、直ちに取消しの訴えを提起することもできます。
正しいです。
労働保険料その他徴収法の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができるときから2年を経過したときは、時効によって消滅するとされています。
誤りです。
2年の消滅時効の絶対的効力として、時効の援用する(一定の事実を自己の利益のために主張すること)を要せず、その利益を放棄する(時効が完成したことを主張せずにその利益を放棄する)ことができないものとされています。
納付義務者が時効になって「払う」と言っても払えないものということです。
選択肢の中には、社労士受験生が多く使用しているテキスト等の教材にも記載のない論点(行政事件訴訟法など)があり、難しく感じる問題かと思います。
正解の選択肢はテキスト等で述べられている論点ですので、労働保険料その他徴収法の規定による徴収金の時効についてもよく理解してください。
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03
労働保険の保険料の徴収等に関して、不服がある場合の救済手段に関する問題です。
誤った選択肢です。
概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分について不服がある者は、「厚生労働大臣」に対して審査請求をすることができます。
徴収法に基づく処分の対象=不服申立人は企業になります。
そのため、一般の人と比べて、専用の制度を設けてまで迅速に権利救済をする必要性は低いといえます。
そこで、徴収法に独自の不服申立制度は設けられず、行政不服審査法を利用して不服申立を行います。
徴収法に関する処分は一般的に都道府県労働局長によって行われるため、公正な審査への期待から、所轄都道府県労働局の労働保険審査官に対してではなく、厚生労働大臣に対して審査請求を行います。
誤った選択肢です。
概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分に不服がある場合、当該処分があったことを知った日から「6か月以内」かつ処分の日から1年以内でなければ、取消訴訟を提起することができないとされています(行政事件訴訟法14条1項・2項)。
当該処分があったことを知った日から3か月以内としている点で、選択肢は誤りです。
訴訟の提起には、証拠を集めたり訴状を提出したりと時間がかかりますので、一般的に「6か月」以内とされていることが多いです。
誤った選択肢です。
概算保険料額の認定決定の処分がなされ、当該処分に不服がある場合には、審査請求を経なくてもいきなり取消訴訟を提起することができます。
なお、不服申立には以下2つの仕組みがありますので押さえておきましょう。
原則として、行政事件においては、審査請求か取消訴訟の提起をするかを自由に選択でき、審査請求を前置せずに行政訴訟を提起できるとされています。
これを、自由選択主義といいます。
例外的に、高度な専門知識や実務的判断が必要な分野で、行政の専門家がまず妥当性を再審査する必要がある場合や、時間と費用がかかる裁判よりも、比較的簡易で早い手続きで国民の権利救済を行う必要があると判断されるような場合には、審査請求の裁決を経た後でなければ、当該処分の取消しの訴えを提起することができないとされる場合があります。
これを、審査請求前置主義といいます。
現在では原則通り自由選択主義がとられる場合が多くなり、審査請求前置主義をとる場合は減少しています。
主な具体例を挙げると、国税通則法に関する処分(∵国税には高度な専門知識や実務判断が要求されるため)や、社労士試験で関係があるものでいうと、労働者災害補償保険法40条(労災保険給付に関する決定)、健康保険法192条(被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分)など、限定的なものです。
正しい選択肢です。
労働保険料その他徴収法の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができるときから2年を経過したときは、時効によって消滅します(徴収法41条)。
誤った選択肢です。
「時効の利益の放棄」とは、時効完成により得られる有利な効果を、自分から「受け取らない」と意思表示することを言います。
徴収法30条は、徴収金は、別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収するものとしているため、国税通則法72条2項に基づいて徴収することとされます。
同条は、「国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができない」と定めています。
したがって、時効の完成により、徴収金を徴収する権利は完全に消滅しますので、納付義務者が時効の利益を放棄して納付する意思を示した場合でも、政府はその徴収権を行使できません。
納付義務者が自ら払うといっているのだから徴収してもいい気がしますが、徴収を画一的に行う趣旨です。
徴収法の不服申し立てに関する問題は細かいですが、出題の形式がほぼ一定なので、一度覚えてしまえば得点源とできる分野です。
苦手意識を持たずに、一度一通りの問題を解いた上で知識としてしまうことをお勧めします。
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