社会保険労務士(社労士) 過去問
第57回(令和7年度)
問58 ((択一式)厚生年金保険法 問8)
問題文
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問題
社会保険労務士(社労士)試験 第57回(令和7年度) 問58((択一式)厚生年金保険法 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
- 理美容の事業で、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は、厚生年金保険の強制適用事業所となる。
- 被保険者が自殺により保険事故を自ら生じさせたときは、被保険者の遺族に対して、当該死亡を支給事由とする遺族厚生年金は支給しない。
- 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、実施機関は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収しなければならない。
- 受給権者が、正当な理由がなく、厚生労働省令に定める事項の届出、又は書類その他の物件を提出しないときは、保険給付の支払いを差し止めることができる。その後、当該差止事由が消滅したときでも、差し止められた分の支給は行われない。
- 被保険者に対する情報の提供として、実施機関は、被保険者に対し、保険料納付の実績及び将来の給付に関する必要な情報を通知している。厚生年金保険法施行規則は、この通知(厚生労働大臣が行うものに限る。)に記載する事項を規定しているが、その1つに、被保険者期間における標準報酬月額及び標準賞与額に応じた保険料(被保険者の負担するものに限る。)の総額がある。
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題で正しいのは、
「被保険者への情報提供としての通知に、被保険者期間中の標準報酬月額・標準賞与額に応じた“被保険者負担分”保険料の総額を記載する」
という内容の選択肢です。
厚生年金保険では、いわゆる「ねんきん定期便」などを通じて、自分がどれくらい保険料を納めてきたかや、将来どのくらい年金を受け取れそうかといった情報を、被保険者に通知する仕組みがあります。
その記載事項の一つとして、被保険者が負担した保険料の総額が挙げられます。
厚生年金保険の適用事業所(強制適用事業所)は、原則として次のように決まります。
・法人の事業所 → 従業員が1人でも原則として適用
・個人事業所 → 常時5人以上の従業員を使用する事業所のうち、一定の要件を満たすものが適用
理美容の事業は、この「常時5人以上の従業員を使用する個人事業所」に該当すれば、厚生年金保険の適用事業所になる業種です。
よって、この記述は内容として妥当です。
(※ただし、この問題では「正しいものはどれか」となっており、他の選択肢との相対で判断する必要があります。)
内容:
「被保険者が自殺により保険事故を自ら生じさせたときは、遺族厚生年金は支給しない。」
説明:
これは、民間の生命保険のイメージと混同しやすいポイントです。
公的年金(厚生年金保険)の遺族厚生年金は、被保険者が自殺で亡くなった場合でも、原則として遺族に支給されます。
厚生年金保険法の給付制限は主に、
・偽りその他不正の手段で給付を受けた場合
・受給権者が故意の犯罪行為などを行った場合
などに関するものであり、被保険者が自殺したこと自体を理由に、遺族厚生年金が出ないという扱いにはなっていません。
したがって、「自殺なら遺族厚生年金は支給しない」とするこの記述は誤りです。
内容:
「偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、実施機関は、その額の全部又は一部を徴収しなければならない。」
説明:
不正に年金を受け取った場合、実施機関(日本年金機構など)は、不正に受けた分を返してもらう(徴収する)ことができます。
しかし、法律上は「徴収することができる」という裁量の表現で規定されているのがポイントです。
この選択肢のように、「徴収しなければならない」とすると、必ず徴収しなければならない義務になってしまい、法律の文言より強い表現になっています。
そのため、この記述は誤りです。
内容:
「受給権者が正当な理由なく届出や書類提出をしないときは、保険給付の支払いを差し止めることができる。その後、差止事由が消滅しても、差し止められた分の支給は行わない。」
説明:
前半部分:
受給権者が、住所変更など法律で定められた届出をしない場合や、必要な書類を出さない場合、実施機関は、一時的に支払いを差し止めることができます。
ここまでは正しいです。
後半部分:
しかし、その後に受給権者が必要な届出や書類を提出し、差止めの理由がなくなった場合には、差し止められていた期間分も含めて、まとめて支給されます。
「差止められた分は一切支給されない」というのは行きすぎた内容です。
したがって、この選択肢は後半の部分が誤りです。
内容:
「実施機関は、被保険者に対し、保険料納付の実績及び将来の給付に関する必要な情報を通知している。施行規則は、この通知(厚生労働大臣が行うもの)に記載する事項を定めており、その1つに、被保険者期間における標準報酬月額及び標準賞与額に応じた保険料(被保険者の負担するものに限る。)の総額がある。」
説明:
厚生年金では、いわゆる「ねんきん定期便」などにより、
被保険者に対して
・どのくらいの期間、厚生年金に入っていたか
・その間の標準報酬月額・標準賞与額
・自分が負担した保険料の総額
・将来受け取る年金の見込み額
などが通知されます。
この通知に何を記載するかは、厚生年金保険法施行規則で具体的に決められており、被保険者期間における標準報酬月額・標準賞与額に応じた「被保険者負担分の保険料の総額」が記載事項の一つとされています。
ここでのポイントは、
「事業主負担分」ではなく、「被保険者が負担した保険料分」に限ることです。
したがって、この選択肢の記述は法律・施行規則の内容と合っています。
今回の問題では、厚生年金保険法の次のようなポイントが問われていました。
・適用事業所の範囲
個人事業でも、理美容のような事業で常時5人以上の従業員を使用する場合は適用事業所となること。
・遺族厚生年金と自殺
自殺だからという理由だけで、遺族厚生年金が一律に支給されない制度ではないこと。
・不正受給に対する徴収
「徴収しなければならない」と書かれているか、「徴収することができる」と書かれているかといった、義務か裁量かの違いがよく問われること。
・届出義務違反と支払い差止め
届出をしないと一時的に支払いを止められるが、後で届出をすれば差止め分も支払われるという流れ。
・被保険者への情報提供(ねんきん定期便など)
通知には、被保険者が負担した保険料の総額などが記載されること。
厚生年金の問題では、条文の言い回しの違い(「できる」か「しなければならない」か)や、「誰の負担分か」「どの範囲まで支給停止するのか」といった細かな点がよくひっかけに使われます。
今回も、不正受給の徴収の表現や、届出をしなかった場合の差止め分の扱いなどが典型的なポイントでした。
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02
厚生年金保険法から広範囲に問題が出題されています。
問題に「~することができる」又は「~しなければならない」という言葉が出てきた場合は、注意しておく必要があります。
間違い。
理美容の事業は、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所では厚生年金保険の強制適用事業所とはなりません。
間違い。
被保険者が自殺により保険事故を自ら生じさせたとしても、それが正常な精神状態のもとになされたことを積極的に認められる場合を除いて、遺族厚生年金は支給されます。
間違い。
最後の「徴収しなければならない」という箇所が間違いです。
正しくは、「徴収することができる」です。
間違い。
差止事由が消滅した場合は、差し止められた分が遡って支給されます。
正しい。
設問の通りです。
厚生年金施行規則(法12条の2)の通知の他のものとしては、
・被保険者期間の月数
・最近一年間の被保険者期間における標準報酬月額及び標準賞与額
・国民年金法施行規則第15条の4第1項第1号(ロを除く。)に掲げる事項
・国民年金法による老齢基礎年金及び老齢厚生年金の額の見込額
そのほか必要な事項があります。
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03
比較的易しい問題です。
特に適用事業所のくだりは間違えないようにしましょう、
誤りの肢です。
強制適用事業所ではありません。
強制適用事業所は
1.国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの(厚生年金保険法第6条第2項)
もしくは
2.いわゆる法定17業種であり、かつ個人事業で常時5人以上の従業員を使用するもの
です。(厚生年金保険法第6条第1項)
本旨は個人事業ですので1.には当てはまりません。
また、常時5人以上ではありますが、理美容の事業は法定17業種ではありませんので2.にも該当しません。
あまりにも基礎的な問題でこれを間違えるのは厳しいです。
誤りの肢です。
結論的には誤りですが、故意に保険事故を生じさせた時は当然給付制限を受けるのが基本です。
ただ、自殺による遺族年金については以下の通り取り扱われます。
「自殺行為は何らかの精神異常に起因して行なわれる場合が多く、たとえ当該行為者が外見上通常人と全く同様の状態にあつたとしても、これをもって直ちに故意に保険事故を発生せしめたものとして給付制限を行なうことは適当でないと考えられる。
したがって、今後自殺による遺族年金の支給については、保険者においてそれが正常な精神状態のもとになされたことを積極的に立証しうる場合を除いて、法第73条による給付制限は行なわないこととされたい。」(昭35.10.6保険発第123号)
「積極的に立証しうる場合を除いて~」なので原則的には支給されるという解釈の方が正確です。
誤りの肢です。
よくあるひっかけです。
「偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、実施機関は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。」(厚生年金保険法第40条の2)
末尾に注目していただくと、「しなければならない」と「することができる」の違いに気が付くと思います。
厚生年金保険法を学んでいるタイミングは通常他の科目がだいたい終わった頃かと思いますが、他科目でも「できる」と「しなければならない」の混同は定番です。
テキストを読み込む際に注目しておきましょう。
誤りの肢です。
「差し止めることができる」なのに「差し止め分は支給されない」ではおかしいので知らなくても気づける問題です。
差し止めは支給停止等とは異なり、準備はできているけど実行されていない状態です。
なので差止事由が消滅したらちゃんと支給が行われます。
支給停止との区別をつけておきましょう。
尚、本肢は厚生年金保険法第78条第1項そのままの出題です。
条文では「”一時”差し止めることができる」とされており、明らかに後から支給することを想定しています。
記載の通りです。
被保険者に対する情報の提供については厚生年金保険法第31条の2に定めがあり、詳細は厚生年金保険法施行規則第12条2に規定されています。
「法第31条の2の規定による通知(厚生労働大臣が行うものに限る。)は、次の各号に掲げる事項を記載した書面によつて行うものとする。
(中略)
三 被保険者期間における標準報酬月額及び標準賞与額に応じた保険料(被保険者の負担するものに限る。)の総額(後略)」(厚生年金保険法施行規則第12条2第1項)
よって記載の通りです。
本問では強制適用なのか任意適用なのかを問う問題がありますが、法定17業種を覚えるのは大変です。
むしろ、法定17業種以外のものを覚えた方が良いです。
法定17業種でないものは農林畜水産、サービス、宗教です。
士業が少し前の改正で強制適用になりました。
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